我的杯子に詰め込まれた我的輩子の話です。

ハグ

お天気のよい週末の朝、思い立って用事ついでにお墓参りに行きました。

同じ墓苑に我が家を含めて母系繋がりのお墓が3基ありますから、お供えも掃除も平等に3軒分です。山を切り開いた墓地なので坂道も急です。以前あった小さな焼却炉は撤去されたのでゴミは全部持ち帰らないといけませんし、水汲場も離れています。

いつの頃からか、お掃除のために一人で参るようになりました。高齢の親を連れて行くと一日がかりになって私の疲れも倍増するからです。とはいえ、私が行くのは年末かお彼岸前の年一回程度。普段は親や親類任せでご無沙汰しています。

我が家の墓を含めて2基は水汲み場に近いので、こちらを先に掃除、お花を替えて・・・昨日はうっかりお線香を買いそびれてしまい、蝋燭だけ。ごめんね~と言いつつ、とりあえずこざっぱりさせました。以前は近くのコンビニにお墓参りに必要なものはすべて売っていたので、思いつきでお墓参りをしても困らなかったのです。2、3年前にコンビニはなくなってしまいましたが、私はそのことをすっかり忘れていました。

でも、私がおっちょこちょいだとお墓の下の人たちはわかってくれていますので、きっと許してくれるでしょう。

さて、祖父母の墓だけが遠く離れているため、バケツに水を汲み直して、坂道を延々と上ったり下りたりを繰り返し、急な石の階段を下りて、やっと到着です。一通りきれいに設えて、さあ帰ろうと思いましたら、何となく、祖父の口癖が思い出されて、足を止めました。

「もう帰るんか」

小さな頃から、毎回、聞かされた言葉。喧嘩をした時も、私の帰り際にいつも言ってくれた言葉。最後は部屋の奥に引っ込んで見送りはせず、「また来いよ」と奥から声が聞こえていました。

昨日知ったことですが、祖父母のお骨を京都の大きなお寺に移すと、彼らの長女が決めたそうです。来年、このお墓の掃除ができるかどうかわからない。「もう帰るんか」という声が懐かしくて、思わず墓石に抱きつきました。しばらくそうしていたと思います。山の上で墓石に抱きつく女、他人が見たら変だと思うでしょうが、日当たりの良い墓地の墓石のてっぺんはお日様のおかげでとても温かく、気持ちよかったのです。

おじいちゃんの温もりです。