我的杯子に詰め込まれた我的輩子の話です。

選ぶ

大学生の就活が始まったそうです。大学生対象ではありませんが、私も人を選ぶ局面に立っております。選ばれる方の気持ちもわからないではありませんが、提出書類に小さなミスが複数あると、好感度は下がります。心の中で、この方ではないなと思ったら、書類上の漢字の間違いとか指摘します。気づかずに同じ書類を他の所へ送ったら、その方の印象はいつまでたってもよくならないと思うからです。指摘した時の反応を見て、やはりこの方ではないな、と確信することもあります。

私が今の職場で面接を受けた時、面接を担当してくださった5人のうち4人はニコニコしておられました。おひとりだけ、私が面接課題で作成した書類について「こういうありきたりのは要らないんです。こんなことをお願いしたいのです。作り直してください」と言われました。それでも私を選んでくださり、しかも着任する前に職場で期待されていることを準備できましたので、本当にありがたい注意でした。10年ほど経ってその方が退職される時、ご挨拶に行きましたら、「え、そんなこと、僕言ったっけ?」と完全に忘れておられましたけれど。良い人に巡り合えて幸せでした。

選ぶ側の条件を、選ばれる側がいつも把握しているわけではありません。30年近く前、当時の職場で外国人のディレクターが私を秘書に内々で指名したことがあります。本人のみならず、周りもビックリ仰天でした。その外国人は日本語がほとんどできず、私は英語で仕事をこなすほどの力はなく、5分程度顔を合わせただけの間柄でした。たぶん、Very glad to see youとか、そんな一言しか言ってないはずです。とても不思議に思った当時の日本人上司が、あの子よりも英語ができる社員はたくさんいると進言しましたら、思わぬ返事が返って来たそうです。私が選ばれた理由は、余計な事を喋らないから、でした。英語は慣れるし、仕事は自分が教えるから心配しなくてよいとも仰ってくれました。ただ一つ条件がありました。人事刷新という敏感な問題を担当するために本社から派遣されたディレクターには、英語の上手い日本人秘書がついていましたが、社交的な彼女は、いつ誰が上司を訪ねて来たのか、聞かれたら何でも答えていたそうです。それに困ったので、私が選ばれたというわけでした。しかし、そのような秘書をいきなり辞めさせては何をするかわからない、ということで、しばらくは他の部署で待機してほしいという条件でした。諸般の事情で私は秘書になる前に退職しましたので、今となっては夢の話ですが、人は何が評価されるかわからないものだと思いました。

今回、私は選ぶ立場にありますが、私の一存で決まるものではありません。私たちが何を求めているのか、何を備えていてほしいのか、選ぶ側も慎重に真摯に向き合っていかなければと思っています。