我的杯子に詰め込まれた我的輩子の話です。

三貂嶺の素敵なカフェ

台湾北部に三貂嶺という駅があります。近くには、有名な観光地の九份やネコ村として知られる猴硐があります。平日、台北から列車で行きましたら、ほとんどの外国人観光客は九份に行くために瑞芳で降りますし、隣の猴硐を過ぎれば、ほぼ乗っている人はいなくなりました。

三貂嶺で降りたのは私を含めて3人くらいだったようです。坑道を思わせるような駅に降りたのは、FBで見た素敵なカフェに行ってみたかったからです。わかりやすい道案内も頂いたのですが、本当に着くのかしら、誰もいないし、という気持ちになるような、本当にだーれもいない、平溪線沿いの一本道でした。橋の手前の右にカフェがある、と書いてあったのですが、えーと、橋の手前の広場の奥にありそうでしたので、そちらへ歩いて行きました。

で、ステップを上がると、ありました。素敵なカフェ。Hytteといいます。お店の女性に聞いたら、ノルウェーの言葉でコテージの意味だそうです。

エスプレッソとドリップコーヒー(浅煎りと深煎り)、カフェラテがあったと思います。食べるものは手作りマドレーヌだけです。エアコンはなく、夏は扇風機。50年前のアメリカ製だそうです。扇風機をはじめお店のほとんどのものがビンテージ。木枠にはまったガラス戸の大きな扉は、新竹の教会の扉として使われていたものを、(こういうものを扱うマーケットがあるようです)店主が偶々見つけたそうです。コーヒーだけではなく、カップもグラスもそれぞれこだわりがあるようです。木の床は、裸足で歩くととても気持ちよさそうです。

経営者のカップルはもともと台北のカフェで長く働き、一時はドイツのベルリンに長期滞在してカフェ巡りをしていたとのこと。今年6月にここにお店を出す前は、この場所の近くで2年ほど週末だけコーヒースタンドを出していたのだそうです。

昔は炭鉱町で働く人でにぎわって2000人いたという人口は、今はみな高齢になり、居住者は15人まで減ったそうです。集落もありますが、ほとんど空き家だそうですよ。コンビニも商店らしきものも見当たりません。川の流れの涼しさを風が運んでくる、とても静かな町です。

カフェのコーヒーは山水で、そのまま飲めるそうです。井戸水と違って、冬はとても冷たいそうですが。

日本だと、コーヒーは新鮮さを大事にする気がします。豆を買いに行くと、早く飲んでねとよく言われます。Hytteでは、二酸化炭素を出し切るまで豆を寝かせ、ドリップで淹れたコーヒーを(アイスの場合ですが)冷蔵庫で3日~1週間寝かせるそうです。2日目はちょっと味がしぼんで(表現が下手ですが、日本語でどう表現するか知りません)しまって美味しくないけれど、3日目以降からだんだん熟成した味に変わるのだそうです。私が頂いた浅煎りコーヒーから言えば、苦みが消えて丸くなる感じです。これは、コーヒー苦手な方でも飲めるかもしれません。

長話をしていましたら、店主がドイツから取り寄せたグアテマラ100%の豆でエスプレッソを淹れてくれました。とっても深くて、濃くて、コーヒーを食べている感じ、です。時々お水を飲みながら、頂きました。

ここのコーヒーは、私がどこでも飲んだことがない味。とても印象深く残っています。

環境も素晴らしく、今のところは自然を楽しみに来る欧米人観光客が店の主流客層だそうです。アジアのお客さんも歓迎です、というお店の女性は、台北で習ったという日本語が大変流暢です。この方と話している最中に、台湾人の女性二人連れがキャリーケースに入れたプードルを連れてきました。ペットもOKのようです。

私が訪れた前の週に、中国語のとても流暢な、台北在住の日本人ジャーナリストが訪れたそうです。きっとこの店とこの村の素敵な物語が、近々、どこかにアップされるのではないかと、ひそかに期待しているところです。