我的杯子に詰め込まれた我的輩子の話です。

家族

同世代かそれ以上の年齢の台湾人と話を重ねて、自分の思い込みに気づきました。

台湾人は家族思い、家庭では奥さんが強い、お年寄りを大事にする社会。そう見えていましたが、そんなに単純ではないのでは、と思っています。

同世代の女性曰く、大学時代のBFはお母さんの紹介、ピアスの穴を開けるのもお母さんの許可をもらってからだった。男の子はもっと大変。お母さんに逆らうわけにもいかないし、大人になっても身の回りの世話を「される」のは当たり前。結婚相手を探すのに親が介入するのは当然で、結婚すると、お嫁さんは自分の親と相手の親とかなりのストレス。週末ごとに兄弟姉妹が順番で実家を訪ねて一緒に過ごす。子供たちの誰も来ない日はお母さんの機嫌が悪く、お母さんはそれを正当な権利だと思っている。

でも、台湾人の旦那さんは優しいでしょうと尋ねたら、彼女曰く、年を取ったら何もしなくなる。リビングでテレビのリモコンを横に置き、新聞広げて一日中座っているだけ。話すこともないし、奥さんはお洒落をして友だちとお喋りや食事に興じる。帰宅したら、相変わらずご亭主が同じ場所に座って、夕飯が出てくるのを待っている、と。

台北のバスの中で三人組の少し年配の女性たちのお喋り。どうやら自分のお母さんが何度も同じことを言うし、干渉したがるので本当に面倒、という話でした。

花蓮で出会った女性。実直で、さりげない気遣いの上手い人と思っていたら、離婚、子育て、キャリアアップを経て、新しいパートナーと歩んでいるとのこと。

女性だけではなく、男性も家族への思いはいろいろのようです。知人の友人男性が清明節の休暇にもかかわらず車を出してくれましたので、申し訳ないと言うと、「昨日義父が来たのだけれど、渋滞に巻き込まれて真夜中に着いた。今日は皆疲れているから、自分は家に居てもやることがない。彼は明日帰るから、夜の食事と明日つき合えば大丈夫」と言ってくれました。何でも、到着日の夕飯のためにレストランを予約して御馳走を用意していたのに肝心のお義父さんが到着せず、結局お持ち帰りにして真夜中に食べたのだそう。翌日、私の予定変更で車をお願いしたら、同じ方が来てくれました。こちらとしては大変申し訳ない思い。その方は「自分はもともと軍で働いていて、義父も軍人だった。義父は足が悪いから、渋滞に巻き込まれないように今朝早く帰ったよ。だからもう気にしなくていい」とちょっと嬉しそう。訪問先で大きな蝸牛を見た時、「この大きな蝸牛と香菜を炒めてビールのつまみにすると最高なんだ。つまみとビールを用意して、友だちとお喋りを楽しむ。他には何も要らない」「家で一人で過ごす時、食事はビールだけで十分。作っても一人で食べる気にならない」と言いました。台湾人にしては珍しく、あまり家族のことは話したがらず、こちらのことも立ち入らず。

ふと、ああ、これからは、こんな境遇、こんな思いの人が増えていくのかな。それとも、もうずっと前からこうなっていて、でもやはり社会のマジョリティは家族との団欒重視だから、この人たちは陰に隠れていたのかな、と思ってみたり。

初対面で家族構成を聞く台湾人は多いけれど、もしかしたら、伝統的な家族観とそれに従えない自分とのギャップに悩む人も多いのではないかと思いました。

家族と言うのは、その存在の温かさと煩わしさを楽しむものなのかもしれません。でも、「でもね」と思っている人もいるように思います。理想の家族像についてはどこの国でもだいたい同じで、それに難癖つけようものなら親不孝者と言われ、道徳的に正しくないことと言われてしまう。そういうのが中華圏は強いのかなと勝手に思っていたのですが、どうも社会は変わりつつあるように感じました。